はやひ研究所

haya"hi" Music Lab

NHK「現代の音楽」アーカイブシリーズ - 黛敏郎

こういう仕事って重要なんだろうなと思う。僕は理系(化学)出身なんだけど一通りの或る分野の仕事をした人は絶対に「総説(一種のアーカイブ)」を書くべきだと思います。人の仕事の寄せ集めなので、なかなか面白い仕事とは言えないんだけど、「総説」によって後進のために(学問的に進むべき)道筋を手っ取り早くつけると言う意味は大きいと思います。わざわざ回り道する必要はないんですよね。そんな功績にナクソス万歳!(いつも変なんだけど僕のMacナクソスとタイプするとはじめに「名糞酢」と出るんです。ごめんなさい。) NHK現代の音楽アーカイブシリーズ 黛敏郎(1929-1997)

七人の奏者によるミクロコスモス(1957)〈初演〉 オーケストラのための「呪」(1967)〈初演〉 プリペアド・ピアノと弦楽のための小品 (1957) ミュージック・コンクレートによる「カンパノロジー」(1959) 〈放送初演〉

七人の奏者によるミクロコスモスしょっぱなから飛ばしてます。「昔」って感じがすることと、とっても羨ましい時代だなあって思うこと。すべての日本が新しいことに恥ずかしがらず挑戦して、すべてが真面目であること。最後の第五楽章は(時系列的に既に書かれていた)「饗宴」のデッサンスコアのような感じで楽しい。外山雄三がピアノっていうのも凄い。 オーケストラのための「呪(しゅ)」次の曲はまた素晴らしくて、たぶんはじめて音盤化されているんじゃないかと思うんだけどな(真偽のほどはJohakyuさんに任せよう)〜。これまた後ほど作曲されるバレエ音楽舞楽」の第一楽章のような感じです。「のろい」って呼んじゃだめね。作曲者の解説(これも収録されている)からもはっきりしているんだけど「ヘテロフォニー」な構造になっていて、これがまた僕の琴線に触れます。自分の曲もヘテロフォニーな曲が多く、日本の伝統音楽の形式を語る上では、はずせない手法だと思います。もっと有名なこの分野の人もいるので、その人の曲はまた後ほど(ここ数年、遅まきながらはまっています)。 プリペアド・ピアノと弦楽のための小品は有名だから割愛。でもプチ自慢。「音楽芸術」の付録としてこの曲が収録されています。時は昭和34年2月号となっています。 S342 いまじゃピアノにこんないじめ(人々はこれを内部奏法と呼ぶ)をするのを許さないホールは少なくなく、なかなか気軽には出来ない曲です。 S342_2 ミュージック・コンクレートによる「カンパノロジー「カンパノロジー」って言葉は、この方のもっと有名な曲のときに言及するとして、「ミュージック・コンクレート」ってのは、僕にとっても楽しい出来事でした。頭でっかちだった僕はこの「ミュージック・コンクレート」ってのを真似しようとした時期があったのです(中学生のころ)。ただオープンリールじゃなくて普通のカセットテープに色んなものを録音して、それまた専用のテープでつなぎ合わせて(速度を変えて録音できる装置があったので)学校の放送室で編集したことも、今となっては懐かしいです。 いまじゃパソコンでちょちょっと出来ちゃうから、こんなタイプの曲への有難みってのいうのは薄いけど、時代背景と当時の情熱を想像しながら聴くとやっぱり感慨深いです。 この音盤に出会えてよかった。ナクソクありがとう。 ★★★★☆